ロジオンです。
今回は塩野七生さんの「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にしてならず」(新潮文庫)の感想を整理してみました。
大作なので1巻ずつ(文庫版は数巻ずつ)整理しようと思います。感想というより、気になった点をメモしていくような感じでまとめようと思っています。
【自分用メモ】
・ローマの立地
イタリア自体が北国と南国の両方の利点を持ち、更にローマはその中間。
→後から考えれば理想的な立地条件。
但しギリシャ人とエトルリア人はローマの土地に魅力を感じなかった。
海に近いわけではなく、丘もそれほど高くないため。
しかしエトルリア出身の王の時代の干拓事業・土木工事で生まれ変わる。
・政体
(途中から王が執政官に変更)
・敗者や移住者を同化(市民権の付与)
敗者や移住者に完全な同条件で市民権を与える。
同等の権利を与えることは同等の義務も与える→軍隊が増える。
初期の王もラテン民族以外の出身者が多い。
(エトルリア人の技術力を導入し、自分たちのものにした)
職能別の団体結成(部族の対立を防ぐ目的もある)
・適時に適材が適所に登用
運が良い面もあるが、上述の部外者を受け入れる体制・価値観が前提。
・多神教
道徳倫理を正すことではなく、守護を求めた(守り神)。
専任の神官を置かず、市民集会の選挙で決める。
一方、道徳倫理を正す役割は家父長制と法律に求めた。
・共和制の創始者ブルータス
改革の主導者とはしばしば新興の勢力より旧勢力の中から生まれる。
(権力の近くで冷静に観察出来る。情報がある)
陰謀に加担した息子二人を冷静に処刑。
・貴族と平民の対立
王政より共和制になって対立が激化。
(三極構造から実質の二極構造。二本足の椅子は不安定)
平民出身の護民官の設立。
貴族もノブレス・オブリージュを徹底。
(平民も大義名分を持てず、始末が悪い。)
・貴族とクリエンテス
貴族は土地だけでなく人的な基盤もあった。
特定の貴族の保護を受ける平民がクリエンテス・・
明確に定義することは難しい。
後援会員? 親分-子分の関係?
・ケルト族来襲とローマ占領
エトルリアを滅ぼしたことで防波堤が無くなった。
紀元前390年ケルト人にローマが占領される。
どん底になり、ふっきれたことで強大化へ進む。
(敗北からどのように立ち上がったか、が重要)
・政治改革(リキニウス法)
全ての要職を平民に開放(完全な自由競争)。
要職経験者を元老院へ(育ちではなく経験と能力が問われる)。
※既成勢力が新興勢力を抱き込む形が有効に作用していく。
・ラテン同盟→ローマ連合
ローマ連合の構成は以下の5つ
①ローマ
②旧ラテン同盟の加盟国。完全な市民権で実質併合
③ムニチプア。ローマ市民予備軍
④コローニア。ローマ人が入植した土地
・街道
政治・戦略上の必要から街道を敷設
両刃の剣でもある(敵も攻めやすい)
・サムニウム族との戦い(南部イタリアの覇権争い)
カウディウムの屈辱(谷間を囲い込まれ降伏)
ゆっくりと、しかし着実に挽回。
・敗戦の後の態度
敗軍の将は罰しない(名誉を失った時点で一番の罰)
新戦術の導入
有効な基本戦略の継続
塩野さんも書いていますが、システムと開放性がローマ興隆の主要因だったと納得させられる内容です。個人的には時代に合わせて変革が進んでいくのがとても興味深く感じました。華々しい個人の話はあまりありませんが、組織論として非常に勉強になります。
(今のイタリア人のイメージと何だか違うな~と感じますが)
人にせよ国にせよ組織にせよ、興隆期の姿を見るのは面白いです。特に負けてから立ち上がっていくのが少年漫画っぽい印象を受けながら楽しんで読みました。
次巻以降も読み直すのが楽しみです(次巻は序盤のハイライト:ハンニバル・・)。
今回は以上です。