自分用の備忘録(ロジオン)

主に趣味(本・音楽・ゲーム)、ペット日記などを書いていきます。

【本・漫画の感想-15】ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷(塩野七生)

ロジオンです。

 

 今回は塩野七生さんの「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」(文庫 だと6・7巻)の感想を整理してみました。

 

 

 【感想】

 ハンニバルスキピオの時代とカエサルの時代をつなぐ巻という印象は強いのですが、グラックス兄弟、マリウス、スッラなど個性的な人物も多く出てきて飽きずに読むことが出来ます。

  国が大きくなってくると、国外というよりも国内に敵が発生するというのが、他の色々な組織にも当てはまるような気がします。興隆した後、これまでうまくいっていたやり方が通用しなくなるのは、会社などでもよく見られる話と思います(うまく立ち直る組織もあるのでしょうが、そのまま衰退していく組織のほうが多いのかも)。ローマの場合は、元老院と民衆、またはローマ市民と同盟者(非ローマ市民)などの内部抗争の中で、個人の台頭が目立つようになり、徐々に都市国家から脱却していきますが、内部疾患を抱えた大型動物がのたうち回る感じに似ています。

 特に印象に残ったのはグラックス兄弟です。マキャヴェリの「武器を持たない改革者は失敗を避けられない」という言葉のとおり、軍隊を持たない本人たちの時代では改革は失敗したものの、後世において基本的な政策は実現した、というのが少し感動的です。逆に、その後に出てくるスッラは、生前は自分の考えた政策をすべて実現するものの、その体制は元老院体制の補強に過ぎず時勢に一致するものでは無かったため、死後すぐに自分の作った体制が崩壊してしまった・・というのが対照的です。このあたりを読むと、大学の講義で聞いた「技術ってのは、だいたいあるべき姿の方向に進んでいくんだよね」という恩師の言葉が浮かんでくるような気がします。

 もう一つ印象に残ったのはマリウスの軍政改革です。失業者対策として徴兵制から志願制に変更し、失業対策や軍隊の質向上に効果絶大だったものの、軍団の私兵化など副作用も大きかった、という点が面白かったです(軍団の私兵化自体はカエサル以降の帝政につながっていくので必ずしもローマにとって悪いことでは無かったのでしょうが・・)。効果が大きい対策は、副作用も大きい時が多いというのは、会社の仕事などでもよく見られる気がします。

 

 

 以前読んだ時は血なまぐさい内容が多いな~という程度の感想で、あまり印象に残らなかったのですが、環境変化に立ち向かう組織の一例、という視点であらためて読むと勉強になる点が多いと感じました。

 

今回は以上です。