自分用の備忘録(ロジオン)

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【本・漫画の感想-5】射鵰英雄伝(金庸)

ロジオンです。

 

今回は金庸武侠小説の代表作の一つ「射鵰英雄伝)」の感想を整理してみました。(徳間文庫の岡崎由美さん・松田京子さん訳を読みました)

荒唐無稽な設定なども多くて歴史を知っているとツッコミどころは満載ですが、金庸の小説は娯楽用というか、あまり深く考えずにストーリーにのめり込むことが出来るので、とても重宝しています。

射鵰英雄伝は神鵰俠侶、倚天屠龍記につながる三部作の一作目ですが、単体で読んでもそれぞれ面白いです。

登場人物が結構多いですし、武俠小説独特の単語も多いので、苦手な方は多いかもしれませんが、ハマると一気に読めてしまう感じです。

 

射鵰英雄伝は大きく以下の要素が絡まり合ってストーリーが進んでいきます。

1) 郭家と楊家

 物語の冒頭に登場する義兄弟の郭嘯天(水滸伝の郭盛の子孫)と楊鉄心(金に抵抗した楊再興の子孫)ですが、金の第6皇子 完顔洪烈により住んでいた村を滅ぼされます。郭嘯天の遺児である郭靖が本作の主人公、楊鉄心の子供である楊康がそれと対比されるような扱い(裏の主人公)となります。

 郭・楊両家の絆・縁は、更に次の世代である楊過(神鵰俠侶の主人公)達まで引き継がれていきます。

2) 当時の東アジア情勢(金・南宋・モンゴル・大理)

 中国の北側が金、南側が南宋、南西に大理国があって、北西の草原地帯にモンゴルが勃興しようとしている時代背景です。チンギスハーン(テムジン)や金・大理の大物が重要人物として登場してきます。

 郭靖はモンゴルで育った少年、楊康は金の皇子としての一面を持ち、物語の中に各国情勢が大きく絡んできます。 

3) 江南七怪と丘処機の郭靖・楊康育成対決

 丘処機は長春真人と言って歴史上の実際の人物で、チンギスハーンの招聘を受けて不老長生の秘訣を問われたことで有名です。全真教という道教の道士ですが、射鵰三部作の中では全真教自体が武術の一派となっており、丘処機も凄腕の武術家として物語冒頭から登場します。郭嘯天・楊鉄心らが襲われた後、その妻・子供の行方を追ううちに、誤解から江南七怪と反目してしまい、郭嘯天・楊鉄心の遺児にそれぞれ武芸を授けて18年後に対決させよう、となります。序盤の物語はこの設定が主軸となっています。

4) 武林最高峰の武芸者達:中神通、東邪、西毒、南帝、北乞

 郭靖達の一世代~二世代前のおじいちゃん、おばあちゃんが異常に強く、また物語の重要な役割を担います。過去に崋山で5人の武芸者が武芸を競いましたが、その時のメンバーは

 (中神通)王重陽:全真教の創始者、丘処機達の師匠、既に故人。

 (東邪)黄薬師:ヒロイン黄蓉の父、ひねくれ者。

 (西毒)欧陽鋒:物語最大の悪役。

 (南帝)段智興:もと大理国の皇帝。

 (北乞)洪七公:乞食党(丐幇)の党首。郭靖・黄蓉の師匠となる。

その他に王重陽の弟弟子の周伯通や、鉄掌党の裘千仭、南帝の元后の瑛姑、黄薬師の元弟子 梅超風など、一癖も二癖もある人物達が物語を盛り上げます。みんな複雑な事情や多面性を持っており、金庸の人物造形は素晴らしいと思います。

5) 九陰真経

 昔、黄裳(実在)という人物が道教についての書物を編纂している折、武術の達人となり、その後、仇をうつために研鑽した自分の武術を書き残したのが九陰真経、という設定です。この九陰真経が物語の序盤から終盤まで、重要な役割を担います。

6) 郭靖と黄蓉の恋愛

 愚鈍だが義侠心が厚く芯の強い郭靖と、聡明でお転婆の黄蓉は、とてもバランスのとれたカップルですが、楊鉄心の遺言、江南七怪と黄薬師の反目、それからモンゴル時代の約束・・等、様々な苦難が押し寄せます。 

 

【感想】

 当時の倫理観が前提となるとは言え、子供の頃から義侠心に厚い郭靖の行動は、読んでいて気持ちが良いです(対比させられている楊康がほぼ真逆の卑劣な人物ということもあり)。あまり知恵が回る方ではないのでやきもきさせられることも多々ありますが、持ち前の純朴な性格から色々な縁をつなぎ、どんどん成長する姿は昔の王道少年漫画を読んでいるようです。金庸の小説は結構クセのある主人公が多いのですが、射鵰英雄伝は主人公に感情移入しやすい方に入ると思います。

 私のお気に入りの登場人物は周伯通です。老人なのにイタズラ好きで、とにかく物語をかき乱す存在ですが憎めません(次作の神鵰俠侶でも大活躍)。特に郭靖と出会ったときの最初の漫才のようなやり取りがとても好きです。 

 

今回は以上です。