自分用の備忘録(ロジオン)

主に趣味(本・音楽・ゲーム)、ペット日記などを書いていきます。

【本・漫画の感想-2】死の家の記録

ロジオンです。

 

今日は「死の家の記録 作:ドストエフスキー」の読書感想です。

(新潮文庫の工藤精一郎さん訳を読みました)

 

【概略(主に解説から)】

ドストエフスキーが4年間シベリアの監獄で実際に徒刑囚として体験し、見聞したこと(監獄内の生活や、囚人たち)を記録したものをベースに小説化したそうです。鋭い観察眼による現実描写が特に優れており、当時のロシアでも評判は良かった模様。

 個人的には浴場の様子や病院の描写が妙に生々しくて印象に強く残っています。

 

【感想】

・最初に読んだのは学生の頃でしたが、正直なところドストエフスキーの後年の他作品に比べ、物語のあらすじみたいなものが無いので、あまり印象に残りませんでした。。

 但し、社会人になって読み直すと断片的な部分ですが、以下のような内容が気になりましたので、備忘メモとして残しておきます。

 

1) 立場の違い:小説内では貴族と民衆

 繰り返し描写されているのが、貴族である主人公が他の一般の囚人から受ける敵意や、疎外感です。以下本文からの抜粋。

「わたしはなるべく素直にして自分の自由を守るようにし、わざわざ無理に彼らに近づこうとするようなことは、絶対にしないが、しかし先方から近づきたいと望むならば、こばまない、という態度を決めたのである。」

「彼らの観念によれば、貴族の名を重んじて、彼らの前でそれを誇りにする、つまり、品を良くして、気取ったり、彼らに眉をひそめて、ことごとに鼻の先で笑ったり、いかにも旦那らしく振る舞うのが当然なのである。そんなことをすれば彼らは勿論、私を罵るだろうが、そのくせ腹の中では一目おくのである。

「彼らの意を迎えようと思って、機嫌取りにお世辞を言ったり、調子を合わせたり、馴れ馴れしくしたり、彼らの様々な悪癖を真似るまでに身を落とすようなことをしだしたら、彼らは私を軽蔑するに違いない。」

「『でも、あなた方が私達のどんな仲間なんです?』と彼は怪訝そうに訪ねた。(中略) 絶対に仲間に入れてもらえないことを悟ったのである。この言葉にちょっぴりでも皮肉、憎しみ、からかいは無かった。単に仲間ではない、ただそれだけのことである。おまえはおまえの道を行け、俺達は俺達の道を行く、お前にはお前の仕事があるだろうし、俺達には俺達の仕事があるんだ、ということである。」

流石に今の時代に貴族がどうこうは分かりませんが、少し身近なところでは、「ブルーカラー対ホワイトカラー」とか、もっと近いと「部下対上司」みたいな関係を考えてしまいました。

勿論、仲良くするに越したことは無いのですが、同じ視点に立っては駄目。ある程度毅然としたところは必要で、お互いやるべきことをしっかりやる、ということが大事なんですかね~。

 

2) 仕事のやる気

 囚人の労働に関しても数回記述されていますが、例えば時間のかかる退屈な仕事のときが書かれている以下のような内容は印象的です(本文抜粋)

「『だからノルマを決めてくれよ』『何度言ったら分かるんだ。ノルマは決めない。艀をばらしたら帰営だ。作業にかかれ!』結局作業にかかったが、のろのろと、気のなさそうな様子でいいかげんなことをしていた。この頑丈な労働者の群れが、どこから仕事に手を付けたらいいのか、まるで分からないらしく、うろうろしている様子は、見ていて腹が立つほどだった。(中略) 

一時間もすると技術下士官がやってきた。彼は囚人たちの言い分を静かに聞いた上で、もう4本の肘材を、折ったりしないでそっくり取り外すことをノルマとすることに決め、そのうえで艀をざっと解体し終わったら帰営してよろしい、と言明した。ノルマは大きかった、しかし彼らの張り切りようといったら無かった!あのだらけた態度はどこに行ってしまったのだ、あの煮え切らないためらいはどこへ消えてしまったのだ!(中略)

ちょうど太鼓が鳴る30分前に決められたノルマが終わって、囚人達は疲れたがすっかり満足しきって帰路についた。どうせ帰れる時間よりせいぜい30分ほど早く終わったに過ぎないが、気分が全く別なのである。」

何だか普段からよく見ているような風景です・・。仕事のやる気を引き出す上で重要なのは①双方向の対話、②具体的な目標、③目標への具体的なステップ と感じます。漠然とした指示だと人は動かないことも多いですよね。。

 

3) 強い人間の一例

 「強い人間」の定義は色々あると思いますが、あくまで一例として・・。

 囚人の中で、小説内にも繰り返し出てくるペトロフが特に印象に残りました。主人公を訪問して会話したり、色々と世話をしたりしますが、囚人の中でも「命知らず」と恐れられたり、自然に尊敬されていたりする人間です。喧嘩の際にも、近づいただけで相手が降参してしまうような描写もあります。

小説冒頭の部分で囚人の中で「強い」人間の特徴として以下が挙げられています。

・面子にこだわり過ぎるが、普段は他の連中の重荷にならないよう務める。

・くだらない口喧嘩に加わらない。

・不自然なほどどっしりと構えて、批判の目で物事を見る。

・上司の命令には殆ど背かない。それも服従の方針とか義務の意識からではなく、何か相互の利益を認めて、ある契約のようなものを履行しているというふうであった。

そして、ペトロフの場合、「教練の際、連隊長が彼を殴ったが、その時に限り逆上し、白昼、散開した兵士の目の前で連隊長をいきなり刺し殺してしまった」「ひょいと気まぐれを起こしたら、どんな障害があっても立ち止まることを知らない」とされています。

囚人となると全く想像の出来ない世界です。。ただ、普段はキャンキャン言わずにどっしり構えて、重要なときに一気に突き進む人や、味方だと心強く 敵に廻すと怖くなる人は尊重されそうな気がします。

 

他には「自由って何だろう?」とか色々テーマがありそうです。また機会があれば読んでみたいと思います。人生経験が増えれば増えるほど、更に発見があるかもしれません。

 

今回は以上です。