自分用の備忘録(ロジオン)

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【本・漫画の感想-9】チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷(塩野七生)

ロジオンです。

 

 今回は塩野七生さんのチェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」(新潮文庫)の感想を整理してみました。

 

 塩野七生さんの文章は、歴史の本と小説が混ざったような独特なスタイルで、かなり主観が強い印象がありますし、好き嫌いが分かれるような作家さんだと思います。あまり堅苦しくなく西洋史の一部をざっと追っていけるという意味合いも兼ねて、私はよく読んでいます。

 

 私は西洋史に詳しくないのですが、チェーザレ・ボルジアの印象は、「イタリアの一部の地方を、武力・権謀術数及び父である法王の権威を背景に手中の収めたものの、父の死後に権力を失い没落した」というものです。客観的に見るとあの時代のイタリアの群雄の一人に過ぎず、どこまで世界史に影響を及ぼしたのか、という観点では、あまり大きな存在では無いのかもしれません。

 

 歴史にifは無いのですが、法王死去の際、もしチェーザレが健康を害さなかったとしても、まだ自前の軍隊が弱小であった点、部下の傭兵が信頼出来ない点、スペイン・フランスと対等に戦うにはまだ力不足であった点、等から、あの時点でチェーザレの権力基盤は法王の権威無しでは十分とは言えず、やはりいずれ瓦解する運命にあったような気がします。

 

 短期間で領土を広げる成功の時期と、部下の反乱を冷静に耐えて乗り切るところまでの部分は、優秀な「マキャベリズムの体現者」として描かれているのですが、その後の没落との落差が非常に印象的です。花火のように一瞬だけ輝くような美しさは、古今東西問わず、人の心を打つような気がします。

 →日本で言えば源義経源義仲、中国で言えば項羽、李自成等、「強いのに最後は負けて悲劇的な最後を遂げた」人物と同じような印象を受けます。最後の最後で選択を間違えてしまう人間的な弱さが内在している点も含めて。

 この本を読むまで全く興味無かったのですが、私も読後はチェーザレのファンになりました。直属の上司には持ちたくないタイプではありますが・・、目的のために手段を選ばない部分は、現代世界で参考になるところもあるような気がします。

  

 父に貸していた「ローマ人の物語」が戻ってきましたので、いずれそちらも再読して感想を整理しておこうと思います。  

 

今回は以上です。